相続時精算課税制度のメリットとデメリット

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生前贈与を行う場合、贈与税の控除制度をうまく利用しないと思わぬ損をすることがあります。2003年に導入された「相続時精算課税制度」は、贈与税が大きく控除される制度ですが、税金が完全に無税になる制度ではないので、注意が必要です。

相続時精算課税制度はどんな制度か、どんなメリットやデメリットがあるのか見てみましょう。

相続時精算課税制度とはどんな制度?

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相続時精算課税制度を利用すると、60歳以上の親や祖父母から、20歳以上の子どもや孫に対する財産の贈与について、一人当たり最大2,500万円までの贈与分にかかる贈与税が無税になります。贈与対象の財産は現金や預貯金だけでなく、不動産や投資信託、株券や積立金、ゴルフ会員権または貴金属など、さまざまなものに適用できます。

また1回で2,500万円のすべてを贈与する必要はなく、長い年月をかけて贈与しても、最大2,500万円まで贈与税が控除されます。


相続時精算課税制度はあまり知られていない?

しかし、相続時精算課税制度はあまり利用されていません。それは、生前贈与自体があまり一般的ではないことや、相続時精算課税制度が複雑でわかりにくいこと、国が積極的に周知していないことなどがあります。また、相続時精算課税制度は贈与税としての節税効果があまりない、という欠点もあります。

さらに、一度、相続時精算課税制度を利用すると、再び通常の贈与税に戻ることができないというデメリットもあり、利用しにくく、利用するメリットがわかりにくいのが現状です。

非課税枠が高い点がメリットです

相続時精算課税制度のメリッ卜は、従来に比べ、多額の財産を一度に生前贈与でき、非課税枠が高いことにあります。子どもや孫一人当たり2,500万円までは贈与税を支払わずに生前贈与が可能ですし、生前贈与をすれば、後々相続争いが起きるのを防ぐこともできます。

相続時精算課税制度は非課税枠が高いというところを見てみましょう。普通の暦年課税だと、110万円を超える贈与に対して贈与税が生じます。その贈与額に応じて、最大で55%の累進税率が課されることになっています。

つまり、年間110万円までしか贈与税が控除されないので、残りに高額な贈与税がかかることになります。したがって、一度に多額の贈与を受けると、大変に高額な贈与税を払うことになります。しかし相続時精算課税制度を利用した場合、贈与のうち2,500万円までについては贈与税が非課税であり、2,500万円を超える部分についての税率は一律20%で、税率が低くなっています。

この2,500万円は一生の総額です。2,500万円を超えた部分について一律20%の贈与税が発生しますが、相続税を算出したときに相続税のほうが有利であれば、その差額が戻ることになります。ですから、当面の間に支払う税金を節約できるのです。

相続税が安くならない点がデメリットです

相続時精算課税制度のデメリットは、贈与税としての節税効果がないこと、つまり相続税が安くならないことです。相続時精算課税制度を利用すると、相続したときには、相続財産以外に相続時精算課税制度で贈与を受けた金額も併せて相続税を計算する必要があります。

一般的な暦年課税制度を利用したときは。相続前3年以内に贈与を受けた金額が相続財産から除外されます。しかし相続時精算課税制度の場合は、贈与を受けた金額のすべてが相続財産となり、相続税を計算することになるのです。

相続時精算課税制度においては、支払った贈与税は相続税から控除できるので、過剰に納めた税金はすべて戻ってきますが、一般的な暦年課税制度の基礎控除に当たる免税がないので、贈与税としての節税効果がないことになります。

上で述べたように、相続時精算課税制度を用いると、生前に多額の贈与を受けても非課税になるメリットがあります。しかし最終的には贈与額の全額が相続税として扱われることになるので、相続時精算課税制度を利用するときは注意が必要です。

二度と通常の贈与税に戻れない点に注意が必要!

相続時精算課税制度を一度利用すると、二度と通常の贈与税に戻れなくなります。これは大きなデメリットです。相続時精算課税制度を利用すると、後から取り消すことができず、永久に、年間110万円までは非課税であるという贈与税の基礎控除を利用できないのです。

一般的な贈与税の課税においては、年間110万円の基礎控除を利用して、何年もかけて少しずつ財産を子孫に移すことによって、将来の相続財産が減り、相続税も軽減するというメリットがありますが、その方法が使えなくなるので、 相続時精算課税制度を使う際には細心の注意が必要です。

また、相続税の非課税枠の減少など制度が変更されても、相続時精算課税制度の適用を取り消すことはできません。2014年までは「5,000万円+相続人の数×1,000万円」という非課税枠がありました。しかし2015年1月1日以降に、非課税枠が「3,000万円+相続人の数×600万円」に引き下げられました。

そのため、改正前は相続税が課税される例があまりなかったのに、改正後は、課税される件数が増えています。

小規模宅地の特例が使えない!?

さらに、相続時精算課税制度を利用すると、「小規模宅地の特例」が使えなくなります。小規模宅地の特例とは、被相続人が住んでいたり事業をしたりしていた土地に関して、一定の要件を満たすときは、80%あるいは50%まで評価額が減額されるという特例です。

したがって、将来の相続税が上がる恐れが出てきます。

相続時精算課税制度を利用したほうがよい場合とは?

相続時精算課税制度はデメリットのほうが多いような印象ですが、相続時精算課税制度を利用したほうがよい場合があります。それはまず、贈与分を含む相続財産が基礎控除の範囲内である場合です。相続時精算課税制度を利用しても、後から相続税が課税されることがなく、贈与税だけを無税にすることができます。

また、贈与時に評価額が下がっている段階で、その資産を贈与するのが有効です。たとえば、不動産や株式など、ガクンと下がったときを見計らって贈与すると、後の相続税評価額も当然低くなるので、大きな節税対策と言えます。

相続時精算課税制度を利用するときはよく考えましょう

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相続時精算課税制度は必ずしも相続税が安くなるわけではないので、安易に利用してしまうと、後悔することにつながります。しかし、賢く利用すると効果的に節税できる場合もあるので、この制度を利用するときは時間をかけて、慎重に考えることが大切です。